エニグマの名曲「Return to Innocence」と台湾原住民との関係

台湾コラム
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エニグマ(Enigma)の楽曲「Return to Innocence」は、1994年にリリースされたアルバム『The Cross of Changes』の中でも特に有名な曲の一つです。この楽曲は、神秘的なサウンドと深い精神性を持ち、リスナーに強い印象を与えています。しかし、その背景には台湾の原住民であるアミ族との深い関わりがあることはあまり知られていません。

楽曲の特徴と成功

「Return to Innocence」は、エニグマの創設者であるマイケル・クレトゥ(Michael Cretu)によってプロデュースされました。この曲は、独特のエレクトロニック・サウンドと、伝統的な民族音楽の要素を融合させたもので、その新しさと普遍性が多くの人々に受け入れられました。特に注目すべきは、曲の冒頭と終わりに使われている独特のチャント(唱和)です。このチャントは、台湾のアミ族の伝統的な歌であり、その独特のリズムと旋律が「Return to Innocence」に神秘的な雰囲気を与えています。

アミ族と伝統的な歌唱

アミ族は、台湾の東部に主に住む原住民であり、豊かな文化と伝統を持っています。彼らの音楽は、日常生活や宗教儀式、祭りなどで重要な役割を果たしており、特に合唱の文化が発達しています。アミ族の伝統的な歌唱法は、ポリフォニー(多声音楽)や対位法を特徴とし、その響きは非常にユニークで、他の文化には見られない特性を持っています。

「Return to Innocence」で使用されたチャントは、アミ族の歌手であるKuo Ying-nan(郭英男)とKuo Hsiu-chu(郭秀珠)の歌声をサンプリングしたものです。この録音は、フランスの民族音楽学者によって1970年代に収録されたもので、当時は商業的な利用が考えられていませんでした。しかし、エニグマのプロデューサーはこの録音の持つ独特の響きに魅了され、楽曲に取り入れることを決めました。

著作権問題と文化の尊重

「Return to Innocence」のリリース後、楽曲は国際的なヒットとなりましたが、その成功の陰には著作権に関する問題が潜んでいました。エニグマ側は、当初、このチャントのサンプリングについて正式な許可を得ていなかったため、アミ族の歌手とそのコミュニティから訴えを受けました。この問題は、最終的に和解金の支払いとクレジットの修正で解決しましたが、文化的な尊重と知的財産権に関する重要な教訓を残しました。

この事件は、グローバルな音楽産業における倫理的な問題を浮き彫りにしました。特に、少数民族の文化遺産を商業的に利用する際の透明性と公正さが求められるようになりました。エニグマのケースは、伝統的な文化を尊重し、その価値を認識することの重要性を強調しています。

郭英男は後にオリジナル楽曲を出したのですが、エニグマの二番煎じ感は拭えず。近代アレンジせずに、素直で伝統的な曲を聴きたかったので、残念。しかも「Circle of Life」って。。。

文化交流と音楽の力

「Return to Innocence」は、アミ族の伝統的な音楽が現代のエレクトロニック音楽と融合することで、新たな価値を生み出した好例です。この楽曲は、異なる文化間の橋渡しをし、音楽が持つ普遍的な力を示しています。エニグマは、この曲を通じてアミ族の文化を世界中に広め、その美しさと独自性を多くの人々に知らしめました。

また、この楽曲は、聴く人々に内省と自己探求を促す力を持っています。タイトルの「Return to Innocence(無垢への帰還)」が示す通り、この曲は純粋さや原初の状態への回帰をテーマとしています。これは、アミ族の歌声が持つ自然で純粋な響きと、エニグマの創り出す神秘的なサウンドが見事に調和しているからこそ成り立つものです。

まとめ

エニグマの「Return to Innocence」は、その音楽的な魅力とともに、台湾のアミ族との深い関係を持っています。この楽曲を通じて、アミ族の文化が世界に紹介され、その独自性と美しさが多くの人々に認識されました。一方で、この楽曲の制作とリリース過程には、著作権や文化の尊重に関する問題も存在しました。これらの経験を通じて、グローバルな音楽産業における倫理的な課題が明らかになり、今後の文化交流の在り方について重要な教訓を提供しています。

「Return to Innocence」は、音楽が持つ力を最大限に引き出し、異なる文化をつなぐ架け橋となった楽曲です。その成功と課題は、今後の音楽制作や文化交流において貴重な指針となるでしょう。

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