老舗60年、三代にわたるこだわりの味/港町・高雄で出会う一碗の贅沢
高雄に旅するなら、その土地の「老味道(昔ながらの味)」をぜひ体験したいもの。今回は、港町・高雄の鹽埕区(イェンチン)にある老舗の名店、北港蔡三代筒仔米糕をご紹介します。なんと、Michelinガイドにも選ばれたということで、その実力とともに、私自身が体験した味わいや現地の雰囲気までお伝えします。
1.老舗誕生とその背景
このお店「北港蔡三代筒仔米糕」は、1956年に現在の場所・高雄市鹽埕区・河西路166号で創業。
その前身は、雲林県・北港(「北港朝天宮」のある街)で油飯を売っていたという一族のルーツを持ち、第一代の蔡さんが高雄に移り住んで米糕(もち米ご飯)に特化した屋台を始めたのがきっかけということです。
商業地として栄えた鹽埕区に店を構え、「筒仔米糕」という台湾らしい米料理の形を守りながら、現在では三代目が味を継承しています。
2.お店の雰囲気と立地
高雄の鹽埕区は、港に近く、かつては商業街として賑わったエリア。そんな街並みに古くから馴染んできたこのお店は、小さいながらもいつも人の列があります。実際、訪れた日も平日午後ながら、次々と注文に訪れる地元客の姿が見られました。
店頭には「筒仔米糕、蒸蛋湯、鉄蛋」など定番メニューが明記されていて、メニューも非常にシンプル。そこがまた「毎日でも通いたくなる」雰囲気を醸し出しています。
正午を過ぎてから開店(13:30〜)し、夜21:30あたりまで営業しているため、ランチ〜夕方の間に“軽めの一食”として立ち寄るのにも向いています。
3.看板メニュー「筒仔米糕」のこだわり

この店を訪れるなら、まず注文したいのが「筒仔米糕」。筒状の器にもち米と具材を詰めて蒸しあげた料理です。北港蔡では、以下のような特徴が挙げられています:
- もち米はある程度寝かせた台湾米を使用。水分量を調整し、蒸した時にきちんと粒立ちがあり、もちながらも噛みごたえがある状態を作り出しています。
- 筒の中には「豚肩肉の細切り、肉そぼろ、豚油を混ぜたもち米飯」「豚皮を角切りにしたもの」という層構成。豚皮のプルプル感を加えて食感の変化を出している点が特徴。
- 蒸し終わった後、一定時間冷まし、提供前に温め直すという工程により、米本来の香りと甘みを引き出しているそうです。
- 上からたっぷりと豚肉そぼろ脂のたれをかけ、少量の生姜を添えて爽やかさを加える。
実際に口に運んでみると、もち米の一粒一粒がしっかり存在感を持ち、そこに脂のコク、豚皮のコリッとした弾力、そして生姜のさっぱり感が一体となって、ひと口ごとに“台湾らしい味わい”が広がります。この組み立てが、ただ“昔ながら”というだけではなく、“完成された小吃(軽食)”としての魅力を強めています。
4.もう一品「蒸蛋湯」も忘れずに

筒仔米糕と並んでぜひ味わってほしいのが、「蒸蛋湯(蒸し卵スープ)」です。
蒸蛋湯は、木桶の筒のような型で蒸した卵の中に、香菇(シイタケ)と瘦肉條(豚の細切り肉)を入れて蒸し、熱いスープ仕立てで提供される一品。
味わいとしては、卵のふわっとした質感に出汁の深み、具材の軽い噛み応えが加わり、筒仔米糕の“もち米+豚油+生姜”という重めの構成を軽くまとめる役割を果たします。
5.実食レポート:私の体験から
実際に訪れての体験を少しご報告します。平日の夕方、少し早めに店に向かうと、店頭にはすでに数名待ち。カウンター越しに蒸し器や調理の様子が見え、期待が高まります。
注文後すぐに出てきた筒仔米糕。見た目は筒状の器から出されて、器にプリンのように盛られたもち米と豚そぼろ、豚皮の角切り。上には生姜の千切りが少し。香りが立っていて、「これは…」というワクワク感がありました。
まず一口。もち米が程よい噛み応えを残しつつも口の中でほどけ、豚そぼろの甘みと豚油のコクがじんわりと。生姜の清爽な香りが後から追いかけ、脂っこさを上手にリセットしてくれます。豚皮のコリッとしたアクセントも、もち米の“もったり”感を引き締めてくれて、とてもバランスが良いなと感じました。
続いて蒸蛋湯。あたたかいスープの中に、柔らかく蒸された卵がふわっと存在し、そこに椎茸と豚細切りが加わります。一口飲むと、卵の甘みと優しい出汁、具材の食感がじんわりと広がり、「隣に米糕ありき」の設計だなと納得。そばにある鉄蛋も、しっかりと味が染みていて、小さな卵ながらも存在感があります。そして、机の上に置いてあるニンニクだれを足すとさらに味変を楽しめます。

食べ終わると、満足感とともに「この味を知ってしまった」という感覚が残り、次回また高雄に来たら立ち寄りたいと思いました。
7.まとめ:高雄旅で“この一杯”を
港町・高雄。古き良き商店街が残る鹽埕区で出会える「北港蔡三代筒仔米糕」は、ただのローカル小吃ではなく、丁寧に作られ、三代続く老舗の誇りが詰まった一碗です。ミシュランにも評価されていることから、観光客が訪れても安心感があります。
旅の途中、ふと「軽く・美味しく・地元を感じたい」と思った時、このお店での筒仔米糕+蒸蛋湯が、その気持ちを満たしてくれるはずです。次回高雄を訪れる際は、ぜひ立ち寄って、もち米の粒立ち、豚油のコク、生姜のさっぱり感という構成を味わい、「高雄の風味」を感じてみてください。




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